自然素材をベースに、その時代の技術と経済力でベストを尽くす。J.ナチュレウォール採用事例〈白鳥邸〉

青森県弘前市。街には、かつて城下町として栄えた名残を今に伝える武家屋敷の保存地区や、明治・昭和初期に建てられた洋風建築が現存し、情緒豊かな光景が広がります。今回ご紹介するのは、市内の住宅地に建つ〈白鳥邸〉です。目板張りの木外壁と、庭の木々が調和する美しい外観が実現されています。

2024年2月に竣工した〈白鳥邸〉ですが、外壁にウッドロングエコ塗装を施したことで、まるで長い年月を経たような風合いが生まれ、周囲の庭木や景観に美しく溶け込んでいるのが分かります。

設計を手がけた〈白鳥ゆき建築設計事務所〉の代表を務める白鳥ゆき様にお話を伺うと―
景観は街の共有財産ですし、街を構成する家々は地域に暮らす人にとって大切なものだと思います。木の外壁は、住宅街にあると少しワイルドな印象を与えるというか、森の中に佇む姿とはまた違った雰囲気に見えますよね。木が経年変化していく様子を美しいと感じるかどうかは人それぞれですし、初めから退色したような風合いに仕上げることで、街並みにより馴染むデザインを目指しました。

白鳥様は、公共施設の家具やインテリアデザインを手がける〈藤江和子アトリエ〉に従事された後、弘前市を拠点とする〈蟻塚学建築設計事務所〉に勤務。数々の住宅や店舗設計を担当され、2022年に独立されました。今回の取材では、独立後1棟目となるご自邸の設計過程や想いについてお話を聞かせていただきました。

雪景色を愛でる暮らしと、自然に溶け込む外観デザイン

冬は氷点下を記録し、令和4年度には最大積雪深120㎝を観測した弘前市。日常に雪がある暮らしだからこそ、雪景色の中に佇む家の姿も思い描きながら外構を計画されたといいます。

雪が降る様子を(家の中から)眺めるのがとても好きで、中庭を設けました。落葉した木々に雪が積もり、全体の彩度が落ちて、そこにしんとした静けさが漂う…そんな風景にはとても癒されます。それと、家の外から見た自邸の姿も美しいものにしたくて、庭にはたくさんの草木を植えました。木の外壁だからこそ、庭の緑とよく馴染む外観になったと思います。(白鳥様)

外壁にご採用いただいたのは、「J.ナチュレウォール ボードアンドバテン」です。
J.ナチュレウォールは、厳選された国産杉の芯材のみを使用した外壁材シリーズで、杉特有の防腐効果と優れた耐候性を備えています。形状は4種類あり、その中でもボードアンドバテンは、和洋を問わずさまざまな建築様式に調和するシンプルなデザインが魅力です。

表面の凹凸が陰影を生み出し、時間や天候の変化によって異なる表情を楽しめるため、趣のある外観を演出することができます。また、部分補修が容易であるため、維持管理の面でも安心してご利用いただけます。

時を重ねて深まる、美しい木のインテリア

室内は、長年愛用されているナラ材のダイニングテーブルを軸に、家具やカーテンなどのインテリアがコーディネートされています。

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空間の印象を大きく左右する床材には、オークフローリングをご採用いただきました。オークは、落ち着いた黄褐色の色合いが美しく、また、家具にも使用される硬さ・強度を兼ね備えており、幅広いテイストに調和する素材です。使い込むほどに色の深みが増し、味わい深い表情へと変化していくため、時の経過とともに〈白鳥邸〉のインテリアに馴染み、空間の一体感を高めます。

無垢のフローリングはもちろん高価なものですが、長い目で見るとお得だと思っています。メンテナンス性はもちろん、経年変化も味として楽しめるものなので、息子たちが汚したり傷つけたりしても『まあ、いいか』と許容できるところも良いですよね。(白鳥様)

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高性能だからこそ叶う、心身の安心

建築の意匠だけでなく、性能にもこだわりが詰まった〈白鳥邸〉。基礎・壁・天井の断熱を徹底し、UA値0.24W/㎡KというHEAT20 G2レベルを実現されています。自邸設計を始めた際、白鳥様は「建築家としてというよりも、施主として、安心して所有できる家を目指そう」と考えられたことを教えてくださいました。

「家を建てるぞ!」と決めたのは、電気代やガソリン代がどんどん高騰している時期でした。大きなローンを背負うわけですし、とにかく不安で。だからこそ、断熱気密をしっかりとって、エネルギー消費の少ない家にすることが、心理的にも安心だと考えました。自邸では、“自分たちの身の丈で、最善を尽くす”という基準を設けて、素材や設備機器を選んだのですが、この感覚ってお客様にも共通するものじゃないかと思います。なので、実際に暮らしてみて得た知見は、お客様にも正直にお伝えしようと決めているんです。

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断熱の要となる窓には、ノルド社の木製サッシを採用されています。アルゴンガス入りのトリプルガラスと高耐久の欧州赤松材を窓枠に使用した本商品は、建物全体の断熱性・気密性の向上に貢献します。また今回、リビングダイニングから中庭を望む窓を6枚構成にしたことで、大開口特有の重量が軽減され、「自然と窓を開ける機会が増えた」と、住まい手ならではの新たな発見も教えていただきました。

冬は床下暖房エアコン1台、夏はロフトに冷房エアコン1台、というシンプルな運用ながら、〈白鳥邸〉では外気温が10℃以下の日中においても、暖房を切った状態で室温23℃を保つ性能が実証されています。また、第1種換気システム(ローヤル電機)を採用することで、効率的な温度・湿度交換を実現。冬でも乾燥を感じない快適な住環境が整えられました。

さらに、懸念されていた電気代は、以前のお住まいと同程度に抑えられており、経済性と快適性を両立した住空間となっています。

最後に

最後に、〈白鳥邸〉の完成にあたってのご感想をお聞きしました。

正直なところ、「ここはもう少しこだわりたかったな」と思う点は、細かく挙げればたくさんあります(笑)。でも、自然素材をはじめとする良いものを使い、その時代の技術や経済力でベストを尽くせたと感じています。後から、もっと良い方法があったなと思う部分も、工夫次第で乗り越えられる、“愛情を持って育てていける家”に仕上がったと思っています。(白鳥様)

大学で建築を専攻されていた白鳥様ですが、就職当初は建築という大きなスケールよりも、家具など人の手に直接触れる距離感の近いものを仕事にしたいと考えていらっしゃったそうです。その視点が、今回の家づくりにも活かされているように感じられました。

また、取材を通して強く感じたのは、意匠と性能が両立された〈白鳥邸〉がまさに「人に寄り添う建築」の体現であるということです。住まい手だけでなく、建築を目にする地域の方々への配慮が感じられる意匠。そして、家計や健康面での安心を実現する性能。これらが見事に調和した住まいから、家づくりの本質が伝わってきました。

建築家であり施主でもある白鳥様の視点を通じ、多くの学びをいただいた〈白鳥邸〉のお話。このたびは貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。白鳥ゆき様に心より感謝申し上げます。

設計:白鳥ゆき建築設計事務所
https://yukishiratori.com/

弊社納材商品
外壁:J.ナチュレウォール ボード&バテン(ウッドロングエコ塗装品)
窓:木製サッシ(ノルド)
床:オークフローリング
デッキ:屋久島地杉
造作テーブル:ホワイトアッシュ巾ハギフリーボード
換気:第一種換気(ローヤル電機)
クロス:エッグウォール(日本エムテクス)
玄関ドア:木製玄関ドア(ガデリウス)
太陽光:カナディアンソーラー