街と人をつなぐ、地域の守り手〈松尾建設〉の新たな家づくり
緑深い山を背に相模湾を望む、神奈川県大磯町。明治の頃から別荘地として人気を博し、現代にいたるまで古き良き建築が継承されるこの地に、繊細な美しさを放つファサードラタンの住宅があります。
こちらを手がけられたのは、茅ヶ崎市を拠点とする〈松尾建設株式会社〉様です。1941年に造園屋として創業し、1952年から建設業をスタートされました。地元茅ヶ崎や湘南エリアの家づくりに長年携わりながら、ライフスタイルショップの運営や、2ヶ月に1度のマルシェ開催など地域に根ざした事業を展開されています。
今回、松尾建設様が手がける新プロジェクトの1棟目に建築された〈大磯の家〉に訪問させていただき、代表の青木隆一様にお話を伺いました。
大磯の家は、温熱環境と意匠の両立、そして湘南の地を想いつくられたモデルハウスです。
当プロジェクトを始められた経緯について、青木様に伺うと-
「これからどんどん住宅着工数は減少していくと言われていますよね。プロジェクトの構想を始めた3年前、こういった状況下で僕たちのような地元の工務店にできることは何だろうと日々考えていました。結果、数は少なくてもいいから湘南に“良いもの”を作る工務店でありたいという考えに至って。自社で温熱、意匠、素材にこだわった新しいモデルを作ろうと考えた時、頭に浮かんだのがチャネルさんでした。」
弊社が独自に取り組んでいる〈林業復興を視野に入れた“屋久島地杉プロジェクト”〉や〈自然素材と温熱環境設備を通して、エコロジーとエネルギーの両立を目指す“グリーンビルディング事業”〉にご共感いただき、お声がけくださったという青木様。
弊社からは商品提案と併せ、仙台市を拠点に空間設計・温熱環境分野でご活躍されている〈菊池佳晴建築設計事務所〉代表の菊池佳晴様を設計監修としてご紹介させていただきました。2021年10月、菊池様が手がけられたパッシブハウス認定住宅〈上杉の家〉への訪問を皮切りに3社連携でのプロジェクトがスタートいたしました。
大磯の家
38㎜厚の屋久島地杉材をルーバーとした外壁。材の上下を斜めにカットすることにより、水捌けの良さを確保している。戸口には欧州赤松材を用いた木製玄関ドア(NORD社)を採用。エクステリア全体でシームレスな意匠性が表現されている。
住宅の玄関口となる敷地南西側。開口を戸口のみとした外観は、気密性の向上、プライバシーの確保といった機能面への配慮がなされている他、ファサードラタンの基材に用いた屋久島地杉の優美な表情、また、シルバーグレーへと変化する経年美を存分に愉しめる仕様となっています。
防水性が必須とされる外壁下地には、台風並の暴風雨にも耐えうる高耐久透湿防水シート「ウートップサーモファサード(WURTH社)」を採用いただきました。デッキ材としても使用される耐久性・耐候性に優れた屋久島地杉と組み合わせることによって、心理的にも物理的にも永く愛される建築を実現しています。
柔らかな光と影が織りなすコントラストが美しい、1階のエントランス。
控えめな照度設定と高さを抑えた天井によって、自然と安らぎを感じられる室内。2階はダイニングルームの天井高を1,900㎜、キッチン・リビングにかけての天井高を1,950㎜~4,100㎜と差を設け、メリハリのある空間が演出されています。
2階のダイニングはこもり感を感じられる1900㎜高の天井と、サッシUNILUXの高気密性が成す静けさによって、美しい景観に集中できる空間が整えられている。
計7ヶ所の開口にご採用いただいたのは、ドイツ・UNILUX社のトリプルガラス高性能サッシです。雄大な自然を望むダイニングには、天然木とアルミを組み合わせた木製アルミクラッドウィンドウ(Uw値0.8W/㎡K)を設置いただきました。木枠にはアルミの1000倍、樹脂の1.5倍の断熱性を有する北欧パインを使用し、大開口でありながら住宅の高気密・高断熱化に大きく貢献します。
商売の枠を超えた、街と人を想う家づくり
お施主様と野球観戦をしたり、時には車の修理先について相談を受けたりと、まるで家族のようなお付き合いをされているという青木様。
取材終盤、街に対する想いを青木様が語ってくださいました。
「茅ヶ崎に生まれ育って48年経ちますけど、本当に良い人が多い街だなと感じますね。小さな頃から街の皆に可愛がってもらった分、僕も地元の工務店として地域の相談役であり、守り手でありたいです。湘南って実は土地が狭くて、どう暮らしたいかよりも、どう広く見せるかに意識が向いてしまう方も結構いらっしゃるので。このモデルを皆さんに体感いただいて、住まいの選択肢を広げることができたらいいなと思っています。」
そう自然に話すお姿は、湘南の文化やコミュニティが継承されてきた証であり、この土地での暮らしを心から楽しんでほしいという青木様の想いが〈大磯の家〉に反映されていると感じました。
高性能建材と高断熱仕様(壁厚:充填105㎜+付加100㎜・屋根厚:300㎜)によって、日射や風向に左右されない快適な住環境を確立した当建築。土地の地形を活かした自由なプランが可能になることで、お施主様、そして街の人々からも愛される建築や街並みが築かれていくのではないでしょうか。
今回の取材に際しご協力いただきました青木様、設計監修を務めてくださった菊池様、本当にありがとうございました。大磯の家を起点とした本プロジェクトの広がりを、楽しみにしております。
Photo:松尾建設様 / channel original
Text:yano
弊社納材商品
窓:UNILUX IsoPlus
UNILUX 木製アルミクラッドウィンドゥ
外壁:屋久島地杉 38x68x3000(加工材)
デッキ:屋久島地杉 38x140x3000
床:北海道産ナラ節有 15x120x乱尺
外壁下地:ウートップサーモファサード(WURTH)
玄関:木製玄関ドア(NORD)
キッチン:オーダーメイドキッチン(IMPACT)
断熱:木質系断熱
施工:松尾建設株式会社(代表:青木隆一様)
〒253-0054 神奈川県茅ヶ崎市東海岸南3-1-15
https://www.matsuokensetsu.co.jp/
設計:株式会社菊池佳晴建築設計事務所(代表:菊池佳晴様)
〒981-0915 宮城県仙台市青葉区通町二丁目5-28 アクス通町401
https://ykaa.jp/