体感と実践で築く、サオビの家づくり

神奈川県西部に位置する、南足柄市大雄山。
市域の約7割が森林という自然溢れるこの土地に、屋久島地杉の外壁に包まれた“素朴で美しい”住宅があります。

こちらの設計を手がけられたのは、株式会社サオビ 代表取締役の島崎 衛様です。2016年から温熱環境を重視した設計に取り組まれ、今年5月に自邸建築でHEAT20 G3レベルを実現されました。今回、完成見学会に訪問させていただき、当建築についてお話を聞かせていただきました。

東京都渋谷区に事務所を構えるサオビ様。社名の由来である「さび(=時間の経過を許容する美しさ)」という言葉のとおり、木の外壁や無垢の内装材をシンプルな意匠に落とし込む、素材を活かした設計を数多く手がけられています。また、コンセプトのひとつに「小さくても住みやすい家」を掲げられ、東京・神奈川を中心に数多くの建築を手がける“狭小住宅のパイオニア”としてもご活躍されています。

島崎様一家が今春まで住まれていたご自宅。横浜市大倉山で“小さくても豊かな暮らし”を実践されていた。
外壁にはウイルウォール(ボード&バテン)を、内装にはクルミ・ナラの床材をご採用いただいた。

温熱環境に取り組む起点となった「秋田視察ツアー」

大雄山のご自邸は、「HIBIKI the MIRAI」を参考に設計を進められたという島崎様。こちらは、静岡県の第一建設様と秋田県のもるくす建築社 佐藤欣裕社長、そして弊社がコラボレーションし生まれた高性能住宅モデルです。“五感に響くミライの家”をコンセプトに、無垢材や高性能サッシを用いて、設備中心ではない「省エネルギーで快適な住まい」を実現しています。

「HIBIKI the MIRAIを参考にしたのは、2016年の冬に参加した“秋田視察ツアー”がきっかけです。チャネルさんに、東北でパッシブ・温熱分野を実現されている方の建築を見に行きませんか、とお話をいただいて。ただ当時は、温熱はお施主様にお金をかけさせるものという印象があって、始めはあまり乗り気ではなかったんですよね。」(島崎様)

弊社が2013年より開催している「グリーンビルディングを学ぶ」ための建築ツアー。弊社の提唱するグリーンビルディングは、環境に配慮した素材+温熱環境設備を通して、「エコロジー」と「エネルギー」の両方に貢献する建築を目指すものです。

秋田視察ツアーでは、寒さの厳しい北東北でグリーンビルディングを実践されている〈もるくす建築社〉様の建物視察を通して、その実例を直にご体感いただくことを目的としています。

▸チャネル通信では、2022年に開催された秋田視察ツアーのレポートを公開しています
秋田で体感するグリーンビルディング
性能と素材、そこに表現される建築の未来

「もるくす建築社代表の佐藤さんが手がけた建築を訪問させてもらったんですが、衝撃の連続でしたね。あたりは雪一面なのに、建物の中は暖房なしでもポカポカしていて、心地が良かった。性能と意匠、どちらも実現されている佐藤さんのお話には熱意があって、そこで自分の設計に対する考えってペラペラだなと痛感しました。初めは施主の皆さんに受け入れてもらえるか不安もありましたが、このツアーをきっかけに温熱提案を始めたんです。」

ここ数年で自然な提案ができるようになったと話す島崎様。グリーンビルディングの良さをお施主様にも体感してほしいと思い立ち、2021年から大雄山の自邸設計をスタートされました。

大雄山の家

(左)敷地東面、(右)敷地南面

目の前に広がる田んぼや山々を室内から眺められるよう、敷地の東面に大きく開口をとられた島崎様邸。外壁から軒天にかけて張られた屋久島地杉は、周囲に広がる雄大な自然と調和する意匠性を感じられます。外壁はT&Gパネル(103巾/糸面取)ご採用いただき、屋久島地杉ならではの油分の多さを活かした、長寿命なファサードが体現されています。

”開放感”をテーマに設計されたという、大雄山の家。
間仕切りがなく開かれた室内は、どこにいても心地よさを感じられた。

取材当日は雨が降っており、外気温は24℃と少し汗ばむ気候でした。しかし、室内は“さらっとした空気感”に満ちており、その心地良さを直に肌で感じられたのです。

この快適な環境を構成している要因のひとつが、計12ヶ所に設けられた開口です。全ての窓に、トリプルガラス構造・高性能樹脂サッシUNILUX(IsoPlus)を用いられ、高い断熱性と気密性を実現されました。

3枚のガラスと、2層の空気層で構成されたUNILUXのトリプルガラス。中空層には、空気よりも比重が重く、熱伝統率が低い(=断熱性が高い)“アルゴンガス”が充填されているため、外部からの熱をきちんと遮断することが可能です。また、Uw値は0.79W/㎡・Kと優れた性能値を有しており、夏場は室内の冷気をしっかりとキープすることができます。

▸今年2月に行われた、島崎様邸のUNILUX施工レポートはこちらから

フロアには、北海道産ナラ材(120巾)をご採用いただいた。
「夏は湿気を吸収し、冬は水分を放出する」という木が持つ調湿作用も、快適な空気環境を構成するエレメントのひとつ。

ダイニングテーブル越しに見える、自然豊かな眺望。夏はかえるの大合唱が響きわたるそう。

家づくりに対する想い

取材終盤、島崎様が今考えられている家づくりへの想いを伺いました。

「建築家はお施主様に寄り添うというよりも、良い意味で裏切らないといけないと僕は思っています。建築を単なる芸術品と捉えるのではなく、住む人の暮らしをしっかり考えること。お互いに意見を交わしながら、本当にやりたいことはこれでしょう、と提案してあげるのが建築家としての務めだと思います。」

お施主様の暮らしや想いに真っすぐ向き合われている島崎様。狭小住宅やグリーンビルディングをまずは自らが体感し、そこで得た経験が“暮らし”にどのような幸せをもたらすのか、ご自身の声できちんと伝えられている真摯な姿勢を感じられました。

今回、グリーンビルディングに取り組まれた経緯を伺うとともに、そこから生まれた実例を体感させていただくという大変貴重な機会をいただき感謝申し上げます。沢山のご来訪がある中、お話を聞かせてくださった株式会社サオビ代表の島崎様、合同会社BAUM代表の平沢様、誠にありがとうございました。(Yano)

採用商品
屋久島地杉T&Gパネル イト面
屋久島地杉デッキ材 140巾
北海道産ナラ節有フロア 120巾/春風クリア塗装
UNILUX IsoPlus
ノルド 木製玄関ドア
ウルト VKPトリオ、ユラソールプラス
ネオマフォーム
タイベック ハウスラップ

会社情報
株式会社サオビ
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-60-6 第一宮庭マンション702
TEL:03-5770-7272