屋久島地杉の樹皮が新たな素材へアップサイクル DESIGNART TOKYO 2021
この秋最大のデザインとアートの祭典「DESIGNART TOKYO 2021」が都内複数会場で、10月22日から10月31日まで開催されました。今回、チャネルオリジナルはメインエキシビジョンである「KURADASHI ~発想の原型〜」に出展された*GELCHOPモリカワ氏の作品に、屋久島地杉の樹皮を提供する形で参加しました。
会期中に都内84箇所で展開された各種イベントの中でKURADASHIは、各アーテイストが試行錯誤の末に生み出した作品のプロトタイプをあえて展示販売するという、全く新たな試みです。まさしく発想の原型というサブタイトルの通り、普段目にできないオリジナルを見ることのできるイベントとなりました。
そして、そこから発信されるメッセージは「CHANCE」。昨今のコロナ禍により、あらゆる機会が制限される中「CHANCE! ~かつてないチャンス〜」が「DESIGNART TOKYO 2021」のメインテーマ。プロトタイプからの拡がりと合わせて、“人生で大切なものはなにか、心を揺れ動かすものはなにか”ということを誰もが表現できる場を提供したいという想いがそのメッセージに込められていたのです。
今回チャネルが参加した作品のタイトルは「KIRIKABU Planter」
このKIRIKABUのコンセプトは「Fake like a fake―偽物は偽物らしくー」。本物に見せるニセモノに対するアンチテーゼを表現したモリカワ氏の代表作です。そこに本物の樹皮を素材として使用した*生分解性プラスチックを用いて、土に還るというFakeだが、組成としてRealを併せ持つという非常に深いテーマの表現が成功したのです。弊社が同様に、本物に見せるニセモノ(木目調・レンガ柄)に対してのReal・本物(木の外壁)を追求した、いわば「Real as Real」であるならば。モリカワ氏とチャネルオリジナルは異業界且つ真逆のタイトルでありながら本質的に〈Fake like a realを求めない〉という同じコンセプトが偶然作品として完成したといってもいいでしょう。
作品の仕様はスツールとプランター。そして今回のバイオマスプラスチックのアレンジと、この展示の機会を実現していただいたのは繊維商社大手の豊島様です。
特にプランターは、屋久島樹皮を混錬したプラスチックを3Dプリンターで80時間かけて生成。その表情はFakeなのにまさしく屋久杉の年輪。ここに至っては、クリエイティブの想いと、豊島様の素材・生成と、弊社の森への取り組みが完全にコラボレーションした仕上がりとなりました。
「屋久島地杉プロジェクト」が始動して6年。樹齢2千年を超える縄文杉をはじめとする“人の保護が必要な屋久杉”ではなく“人の手を加えないと守れない屋久島地杉”の復興を目指し、さまざまな製品として活用してきました。今回は木材製品としてではなく、樹皮のアップサイクル。そしてそれが異素材開発とアート作品への参加として、更なる広がりを実現できたことは、このプロジェクトが目指す産業林の有効活用をまた違う意味で前進させられたと感じています。
7年目を迎える日本最大のアートイベント「DESIGNART TOKYO」。そこへの参加は、弊社にとってまた新たな“オリジナル“をスタートさせる大きなモチベーションにもなった、素晴らしい機会でした。
今回の全ての関係者の方々、本当にありがとうございました。
そしてこの作品を目にする機会がありましたら、そこに込められた様々な想いをぜひ感じていただきたいです。
Text:Hieshima
*GELCHOP(ゲルチョップ)
2000年に結成。モリカワ リョウタ、オザワ テツヤ、タカハシ リョウヘイ、3人の工作好きによって活動を続ける3D造形グループ。ハンドワークで、イメージと現実の世界をつなぐ、立体というカテゴリーのもと、多岐に渡って活動。パブリックスペースのアートワーク、オリジナルプロダクト、はたまた、玩具、農作物、車、建築、エネルギー、コミュニティーにいたるまで、”つくる”ということを”D.I.Y.”精神をもって探り、手を汚す日々を過ごす。http://www.gelchop.com/
*生分解性プラスチック
微生物や生物由来の酵素の働きで、水と二酸化炭素に分解され、数週間から数ヶ月という短期間で自然に返るプラスチック。