「屋久島地杉が主役のイロトリドリな保育園園舎」設計に込めた想いとは。

埼玉県さいたま市。浦和南高校、南浦和中学校のすぐ北側の閑静な住宅地に、今年の4月、浦和つくし幼稚園の連携保育園『つくしナーサリー』が開園しました。こちらの設計・施工を手がけたのは、日本全国699*の園舎設計を行っている株式会社 時設計様。今回、浦和つくし幼稚園とつくしナーサリーを担当された建築設計部 課長の吉野様と、浦和つくし幼稚園 園長の秋本様に屋久島地杉を随所に設えた当保育園の園舎づくりについてお話を伺いました。
*2022年11月の総数

つくしナーサリー


『イロトリドリの喜びを、ともに。』というコンセプトを基に「ひとりひとり、育つペースも、得意不得意も、違って当たり前。」といった「肯定を基本」を保育理念に掲げる『つくしナーサリー』。働く親御さんが安心してお子さんを預けることができる、1歳児・2歳児を対象とした小規模保育所を開園なさいました。

設計を担当した吉野様とは、2016年に開園した浦和つくし幼稚園の園舎づくりからのお付き合いになるとのこと。先生方と吉野様との間で築かれた信頼関係の中で、つくしナーサリーの園舎づくりは始まったのです。

幼稚園宿舎:写真コンクリートの風合いを残した塗装、現代建築の素材であるアルミサッシなども、素材の特長や風合いを残し互いの良さを引き出すことで、子どもたちの視覚・触覚的な興味を引き出し、身近な素材への理解や美しさに働きかけている幼稚園園舎。個性豊かな人間に育ってもらいたいという願いが込められています。

今回、時設設様に依頼をするにあたり重視したポイントを秋本園長先生はこう語ります。
つくしナーサリーのコンセプトである『イロトリドリの喜びを、ともに。』という言葉は、お子さんの個性を十分認めながら、ひとりひとりに合わせて、保護者の方と一緒に過ごせていけたらな、という想いです。だからこそ『イロトリドリ』というフレーズを、赤や青といった人工的な色で表すのではなく、子どもたちの良さを引き出すように、自然素材そのものの個性を上手く引き出して表現できたらいいなと考えました。(秋本園長先生)

その想いを形にするためにお選びいただいた“素材”が、
弊社独自のプロジェクトで生まれたのが『屋久島地杉』だったのです。

Exterior

浦和つくし幼稚園のすぐそばに建てられた『つくしーナーサリー』。道路沿いの外構に設えた鮮やかなフェンスが、園児だけでなく園舎の前を通る人の心も楽しませます。こちらのフェンスには屋久島地杉のS4Sボード(39×230×4,000㎜)を採用。無垢の表情をメインにしたいという秋本園長先生のご希望から、半分は無塗装に、半分は食物油をベースにした無公害塗料『オスモカラー』を10色使用し、素材感を活かしたイロトリドリな配色がなされています。

ラフ画:幼稚園、保育園の園舎管理・デザインを担当する楠先生によって制作されたフェンスと壁面の屋久島地杉S4Sボードの塗装配色のラフ画。屋久島地杉の表情に合わせて「自然な色」で、かつ「寂しくない色」を意識し配色したことで保育園らしい楽しい雰囲気を表現されています。

Interior

「居心地の良い空間になりました。」と秋本園長先生に案内され中に入ると、エントランスの正面に設置された大開口から差し込む日光、柔らかな風、そして内装に設えた屋久島地杉の香りがふんわりと空間を包み込んでおり、室内に居ながら自然に身を置いているような心地良さを感じました。

外観同様に黒をベースにした1歳児と2歳児の保育室には屋久島地杉のS4Sボードをルーバーとして採用。一般的に、外装に使用する材をルーバーとして施工したことで大木の枝のような重厚感のある天井になりました。さらに、ルーバー間に備え付けたLEDライトが、黒い天井とデッキ材の表面に反射し木漏れ日のような仄かな明かりを照らしています。

今回、外構のフェンス、壁面のアクセントそして内装のルーバーと随所にご採用いただいた屋久島地杉。お選びいただいた理由を吉野様はこう語ります。

6年前、幼稚園園舎づくりの打ち合わせで『木は木のまま、鉄は鉄のまま』と話していて、その素材の良さを引き出すことが幼稚園の教育方針にも繋がるのではないか、という意見がお互い自然にありました。新たな園舎の素材を探す中で、根岸さん(横浜営業所)に屋久島地杉を見せていただいたんですが、普通の杉とは表情の違う少し荒々しい木目だったのでこれは面白いなって思いましたね。つくしナーサリーのコンセプトをカラフルな色で表すのではなくて『本物の素材』そのものの色を引き出すことで表したい、という秋本園長先生のご希望に対してかなり魅力のある材だなと感じご提案しました。(時設計 吉野様) 

園舎を通して園児たちへ伝えたい想いとは

取材で園舎を伺ったのは、お昼寝から目覚めた園児たちがクラス活動のために外へと向かっている時間でした。中には、元気よく走って園庭に出ていく子や、眠い目を擦りながらゆっくり歩いて向かう子の姿が。それぞれの園児たちが個々のペースで健やかに過ごしている様子を見て、当保育園が掲げる「ひとりひとり、育つペースも、得意不得意も、違って当たり前。」という保育理念が体現されていることを実感しました。

大切な生育環境となっている「つくしナーサリー」の園舎を通して、秋本園長先生が園児たちに伝えたい想いを教えていただきました。

昔は、パステルカラーに囲まれた可愛らしい園舎が一般的に多かったのですが、そこには『子どもはパステルカラーが好きだろう』という大人のイメージが反映されていたように思います。でも本当は、子どもたちってどの色でも好きなんですよね。紅葉と言えば赤やオレンジの2色のイメージが先行してしまいますが、実際は多種多様な色合いが混じったものであることを、子どもたちが自発的に探していくというのがきっと大切なんだと思います。園舎づくりも同じで、1歳や2歳の子どもたちが屋久島地杉の表情や素材感に触れることで『木は茶色や緑色だけではないんだ』ということを無意識に感じ、ゆくゆく後の記憶に繋がっていくと嬉しいですね。(秋本園長先生)

最後に

今私が木材に携わっているのも、幼少期に過ごした木造2階建ての祖父母の家がたまらなく好きで、その記憶が原風景となり、木材に対する心地よさを無意識に生んでいるんだろうなということを納得しました。つくしナーサリ-の園舎で目にしたもの、触れたものが、やがてお子さんたちの原風景となり、人生の豊かさに繋がることを願っております。

そして、その景色のなかに屋久島地杉をお選びいただき誠にありがとうございました。

Text:Hieshima

会社情報
設計:株式会社 時設計
〒103-0004 東京都中央区東日本橋3-12-11 アヅマビルMAP
施工:柏木建設
〒338-0013 埼玉県さいたま市中央区鈴谷2丁目638番地
現場:学校法人秋本学園 つくしナーサリー
〒336-0026 埼玉県さいたま市南区辻4-8-7

採用商材
屋久島地杉 羽目板 節有 無塗装
屋久島地杉 S4S 節有 KDボード
WRC無節~上小 MIXカラー 板目・柾目
木製(WRC)玄関ドア・キュレイショナー