新人営業カナダ研修レポート
新型コロナウイルス感染拡大の影響で依然自粛が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。様々な対応に追われ不安な日々を送ってこられた方も少なくないと思います。
ただ一時よりも少しずつ、世界は活気を取り戻しつつありますね。
油断はできませんが、少しでも前向きな出来事を発信していけたらと思い、ここでチャネルオリジナルのアクティブな活動をお伝えいたします。
日本でまだコロナウイルスが流行しはじめる前の2020年2月10日~13日、カナダ バンクーバーにて新人営業の研修が行われました。
このバンクーバー研修は、弊社営業として入社した新人は必ず参加している恒例研修で、約15年前からカナダのグループ会社であるCHANNEL-EX CORPORATION(チャネレックス)と協力して毎年続けています。
目的は、弊社のコンセプトを深く理解すること。オリジナルブランドのWILL WALLがどのように作られ、それ以前に材料であるレッドシダーは何処から・どのようにしてやってくるのか。
また原生林の歴史・原産地や工場の実態、「川上から川下まで」を学び、目に見えていない商品価値までのアウトプットができるようになることです。
同時にカナダと日本の町並みの違い、それを見てどう感じるか、一個人としての感性を磨くチャンスでもあります。
今回は3名の営業社員が参加。各自、大変ボリュームのあるレポートを書いておりましたので、要所をピックアップしてお伝えしてまいります。少々長くなりますが、お付き合いいただければ幸いです。
バンクーバーについて
バンクーバーは、カナダのブリティッシュコロンビア州に属し、アメリカとの国境付近に位置します。人口は約65万人前後、その約5分の1を中国含むアジア系民族が占めています。
気候は温暖で降雨の時期は異なりますが、降水量・気温の変化の点で日本とよく似た気候形態です。
近年アジア系民族の増加に伴い住宅購入者が増え、土地・住宅ともに高級化が進んでおり、住宅購入価格は他の地方に比べて比較的高い傾向にあるようです。
空港や町並み、施設や住宅地など
バンクーバー国際空港は空港ながら木がふんだんに使用されており、植栽との組み合わせでとても落ち着きのある空間となっていました。看板は緑色で統一され、木で作られたオブジェが多く設置されており、たくさんの人々が行き来する出入り口の目立つ場所には大きな木のモニュメントが存在感を放っていました。
バンクーバー市内では、ほとんどといって良いほどの建物で木外壁・木屋根が使用されており、特に住宅に関しては木を使用していないものを探すほうが困難なほど。
レッドシダーをはじめ、木と石などの自然素材での組み合わせが多く、ほとんどの住宅の庭に背の高い木や、道路との境界に生垣や木のフェンスが設けてあり敷地に奥行きを感じました。
またそれらは木の外観とよく合い、町のアクセントに。日本ではまず見ない、シンプルかつ統一感のある町並みでした。
途中、ノースバンクーバーの市役所にも立ち寄りました。
建物はデザイン・機能性に富んだ作り。外観はレッドシダーを使用し、内部は木素材のほか天井・壁がほぼガラスで晴れた日は効果的に太陽光を取り入れられます。
ガラス面が多いにも関わらず断熱・気密がしっかり取られており、暖かさを感じました。
日本の、きれいであってもどこか無機質な雰囲気とは違い、自然と調和した明るく開放的な空間は、思わず足を踏み入れたくなるような人を惹きつける建築だと感じました。
Brent Comber’s studio
カナダ・パシフィックノースウエスト産の様々な樹木を利用し、オブジェ、環境・空間デザイン、アート作製、家具デザインなどを手がけるアーティスト ブレント・コマー氏。
今回、彼のスタジオにも訪問させていただきお話を伺うことができました。
コマー氏は、製品化する過程で出た規格外の木材や元の環境から撤去される樹木など、自然で素朴な素材が持つストーリーと個性を見出し、新たな価値を生み出した作品によって世界を繋げているのだと話します。
これは芽生えをイメージして作られた作品。
森の中で木と木の間にいるかのように、円と円の隙間の奥にこの作品を作った木の環境、生息していた森が感じられるとのこと。
詰められた木の大きさも隙間も一定ではないことで自然に近づけ、芸術的な美しさだけではなく、素材本来の姿や記憶を想像できる作品だと感じました。
コマー氏が作る作品には芸術性、木材の個体差や特徴、素材にあるストーリーが共生していて、自然そのものを感じることができます。木材の使い方は産業以外にもあるのだと改めて感じた時間でした。
Stanley Park
バンクーバー市 ダウンタウンの西に位置するスタンレーパークは北アメリカでトップ10に入る程の大きさで世界でも人気の高い、市が管理している公園です。400haの面積を持つ公園は、その周りの多くが海に面しており、公園内には複数の施設を有しています。
公園の観光案内所の近くにはレッドシダーでおなじみのトーテムポールが複数種立っており、原住民の歴史を学べる空間が公園の一部として溶け込んでいました。
公園自体はほとんど手入れされないそうで、風雨に長年晒されたトーテムポールは多少傷ついていましたが、少なくとも50年以上経った現在も真っ直ぐ立っているその姿を見て強さを感じました。まさにそこに根付く大木のようです。
歴史的文化の部分でも長く人々に伝えられ、ともに生きてきた樹木なのだと感じました。
公園中央部は自然そのものが残されたままの空間が存在し、レッドシダーやヘムロックなどが自然更新を行い自生していました。樹高約60mはゆうに超えるであろう木々があるがままの姿で立っており、周りには倒れた木々や更新している稚樹など、日本の公園とは異なる自然と生命が息づいている空間に驚きました。
The University of British Columbia
チャネレックス社員の数名の出身校でもあるUBC。西部カナダ最大といわれるほど広大な土地と規模に圧倒されます。案内板でも一度に全体を表記できないほど。
そのうちCLTで建てられた、ガラス張りを多く占める地球科学棟を見学しましたが、やはり温熱環境が良く、吹き抜けの上層部でもほとんど温度差を感じませんでした。
その吹き抜けを更に開放的にみせていたのが柱のない階段でした。
計算しつくされた徹底した作りなのだと思いますが、一体どうしたらこのような階段が作れるのか不思議でなりません。
まるで一つの街であるかのように充実した敷地内。学習面だけでなく生活・デザイン全てにおいても世界レベルの大学であると感じました。
Research Forest
カナダの森林資源は世界全体面積の約10%をも占める割合です。その内約60%がBC州の西海岸にあり、広さはBC州国土の56%にもなります。リサーチフォレストはその内のひとつです。
約5000haの森林は1949年よりUBCが所有・管理しており、現在約1000の研究・林業・教育・レクリエーションが共同して行われています。その研究費用や区域の存続は大学からの費用で賄われているのではなく、リサーチフォレスト自体の林業・レクリエーション等で成り立っており、ほぼ独立した森林であるというから驚きです。
森林内でのレクリエーションやエデュケーション活動は一般市民や子どもを対象に行われており、研究の為だけではなく森林そのものを文化・教育面において共有すること、自然との共生を体感する場として維持されています。
レッドシダーの樹皮は昔、服や工芸品、日用品などに使われており、それを伝える為のレクリエーションの跡がありました。(写真右)放っておいても剥いだ部分は新しい樹皮で覆われます。
リサーチフォレストは生態系を維持した手を加えない天然林(二次林)と、ある程度植林などで手を加える人工林の二種類で構成され、いずれもほとんどがレッドシダー・ダグラスファー・ヘムロックの3種類で、森林内の生息の多くを占めています。
天然林では、日本でいう手を加えた後放置された森林特有の腐食したような匂いが一切なく、森林本来の香りが印象的でした。
1949年以前、リサーチフォレストと称される前もこの森林は古い歴史をもっています。1868年には大きな山火事がありました。火事に強いダグラスファーは多く生き残り、傷ついたレッドシダーは再生能力が高く樹皮でカバーするように徐々に元気を取り戻していきました。
そうして残った土壌に、生育の早いヘムロックが育ち、弱肉強食の生育環境で生態系が繰り返されているそうです。
リサーチフォレストは、森林全体を外の世界と繋げ、守るのではなく見守るという方法をとっています。
それは「この森は希少だから人の立ち入りを禁じ遮断する」もしくは「観光地にするために美化・整備する」などの日本の極端な発想とは異なり、森林と共生・次世代へ繋げていくという本来あるべきひとつの林業の形なのだと考えさせられました。
Cedar Land
チャネルオリジナルが扱うレッドシダー材の輸入先で、主に節無し(クリア材)を製造しています。このとき工場には、白太の少ない美しいベベルクリアやT&Gパネルクリアがパッケージされていました。全て手作業で丁寧に梱包しています。
大まかな工程としては、2x6の材料を乾燥しサイズごとに選別、形状の加工を行います。この工場の乾燥窯は北米でも最大級の窯で、一度に約2000㎡分の乾燥が可能です。コンピューターでしっかり管理し、60度のバキュームで乾燥を行う真空乾燥窯です。
低温での乾燥によりゆっくりと水分を抜く真空乾燥は木へのストレスが少ないため、割れや変形を防ぎます。
乾燥が行われた材は使える長さにカットされ、含水率によっては除かれます。使えるもの使えないもので見分け、更に長さ毎に8ヵ所へ分類されます。コンピューターが節の位置を非常に細かく認識し、短尺でも使える材を無駄なく選別しラインに運びます。
また、モルダー1つでプレーナーと実加工が出来る機械があり、様々なサイズ・形状の商品を見せていただきました。弊社が扱っている商品形状のサイズ違いから変わった形状のものまで、様々な種類・塗装を目の当たりにし、木外壁の大きな可能性にとてもわくわくしました。
Waldun
ウォルダンはシングル・シェイクの工場です。
水上で運ばれてきた丸太を引き上げ短くカットし、それを割いてグレーディング分けをします。驚いたことにこちらはコンピューターを使わず9割の作業が人の手で行われています。
丸太にするために刃物を入れるのも人の手、丸太を移して割いていくのも人の手、商品用に細かい部分を調整・カットするのも人の手・・・少しでも目を離せば大怪我をしてもおかしくない危険と隣合わせの現場で、皆様一生懸命働いておられました。
弊社のルーフは100%節無柾目のプレミアムグレードに分類された商品で、これは施工して見えなくなる面であっても、ひとつでも節が入れば下のグレードに落とす、限りなく最高級のグレードだと教えていただきました。
だからこそ屋根材に最適で、美しい表情、屋根部での耐久性を保てるのだと納得。これこそルーフ商品の本当の価値のように思います。
プレミアムグレードの下にはナンバー2、スタンダードと続きますが、ひとつでもグレードの違うものが入っていれば返品交換に応じる と言われるほど、確実な自信をお持ちでした。
実際、定期的に抜き打ち検査が入りグレーディングのチェックをされるそうで、品質が守られない=工場全体に影響してしまいます。そのためレベルも教育も徹底しているそう。
またこれほど危険な作業が多い工場ですが、職人たちを守るため安全管理はしっかり行われていることから、セーフティマネジメントに選ばれているそうです。
Vancouver Public Library
バンクーバー市立図書館へは、今弊社が販売準備を進めているVanair通気ドアが使われているとの事で訪問しました。
Vanair通気ドアは、“空気は通すが音は通さない”画期的な内装ドアです。会議室のドアに使われており、内側が見えない一本のスリットだけで、他のデザインに干渉しないシンプルさが特徴です。
スリットに手を近づけるとしっかり空気の流れを感じ、内外で空気循環ができていることが確認できます。また使用中の部屋の前を通った際、中の会話は全く聞こえずレベルの高さを実感しました。
Chemco
1981年創業のケミコ社はチャネルの商品に欠かせない会社のひとつで、ウイルウォールを製造していただいております。新事務所となり、内外装はホテルのようなデザインです。
ウイルウォールを製造いただく基本的な流れは以下の通りです。
1.圧力窯で材に薬剤を注入(24時間~48時間)
2.材を斜めにし余分な薬剤を落とす「ドロッピング」(2~3日)
3.注入した薬剤の量を測定
4.材の組み直し
5.乾燥(約1週間)
6.手作業で梱包・出荷
注入は1度に300㎡分行うことが出来、窯に入れる前とドロッピング後の重さを測定することで薬剤の含有量を測定します。
測定に関しては非常に細かく、事前に1バンドルを小さいロットに分けた後、1枚ずつ手作業で重さを測定していきます。重さの測定は材に付けられたバーコードで管理されていますが、かなりの量を手作業で測っており、とても労力がかかっています。
乾燥窯に入れる前に行う組み直しは、桟の跡がつかないよう一層毎に通気用のホームスティッカーを挟み手作業で行います。
注入後の乾燥は窯が大きいので一度に大量の材を乾燥できますが、材の量が窯の上限量に達してから乾燥させるため、それまでに測定までの工程を約10回繰り返し行うそうです。
全ての工程を終えたらようやく梱包・出荷できるのです。
ケミコ社の強みは薬剤が自社製造であること。コンピューター上で細かく分量を管理しながら、素材を組み合わせて薬剤を製造していきます。
製造には1ロットで5~6時間かかり、1週間に1回は作る必要があるそうです。
完成した薬剤は毎回品質管理として一定量分析に保管します。自社一貫製造だからこそ商品全体の品質管理、納期の一定化が可能なのです。
そしてケミコ社ならではの丁寧な作業が加わることで、お客様からウイルウォール・チャネルオリジナルへの信頼をいただけていることを実感しました。
Boat houseとその周辺、West Vancouver
アメリカ国内、海を見渡せる半島のような場所。ここにチャネルオリジナルの原点があります。このボートハウスは築100年以上経っており、シルバーグレーの外観に所々苔が覆い、まるで呼吸している生き物を見ているかのように感じました。
海風や台風もくるであろうこの場所で、100年もの間壊れずに建ち続けるボートハウス。一部立ち入りできない箇所はあるものの、未だに使われているところも含めレッドシダーの耐久性が高いこと、また人々がこの建物を大切につかってきたことがわかります。
ボートハウス周辺には住宅街があり、集合住宅・戸建て関係なく木製外壁や石、木サッシなどが使われていました。区画によってデザインが統一され、外溝や植栽も目を惹く町並みとなっていました。
West Vancouverの高級住宅街はとても「お洒落」な空間で、この一帯は特に元々あった自然をそのまま利用している家が多く、家の敷地内に川や樹齢の古いレッドシダーが自生していたりしました。
日本のように、自然を切って平らにしてから新たに家を建て緑を植える、とは間逆の、その自然に溶け込むように建築するという考えが素晴らしく、ぜひ日本にも広まってほしいと考えました。
まとめ
バンクーバーは都市部の近くに多くの森林があり、住宅に住む人、製材する人、森と関わる人に「自然と共生する」という根本的考えがあると感じました。
また使っている木だけでなく自然や森のことを考え、余すことなく次世代へ繋げて伝えていくという考えが当たり前に受け継がれていると思いました。
日本もまだ木造建築や自然が多く、それを研究し、守り、活かしていこうという方達もたくさんいます。同じような考えが広がらないのは何故なのか。きっと、便利で安価なものに触れ過ぎて、変化を嫌うという概念が強いということもありますが、恐らく「知らない」ということが大きいのだと思います。
外観や自然素材を使った住宅でより身近に木を感じ「知って」もらうこと。自然や森に興味を持ってもらうこと。
身近に触れる機会が少なく、森と言えば世界遺産・登山・田舎という考えが根付いてしまっている日本だからこそ、「住宅」は思考を変えていくきっかけになるのではないかと考えます。
チャネルオリジナルが扱っている材料は、長い歴史や先人の知恵は勿論、多くの人々の協力や努力を経て国内に輸送されていると実感しました。
簡単に作って出荷しているのではなく、商品ひとつひとつに時間も労力も想いも込められ、見えない商品価値がたくさん詰まっている。それは忘れてはならないことだと思います。
また、カナダは昔からあるものを活かす方法を考え、最大限に利用していると感じます。これは日本であれば杉、それこそ屋久島地杉や北海道産フロアが当てはまると考えます。
そして私たちは顧客先にただ商品を売るというだけでなく、材の価値、使い方ひとつで変わるデザインや性能などを伝えることが重要なのです。
川上から行うチャネルオリジナルならではの、希望に応える可能性の豊富さを伝えていくことで顧客の見聞が広がり、使っていただくことで木外壁が広がり、「知る」ことに繋がり伝播していく。
私たちはその流れを作ることができる、そう強く信じています。